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クロロフィル・カロテノイド定量方法(アセトン抽出法)

2012/11/21 筑波大学 野田 響

ここでは,アセトンによるクロロフィル・カロテノイド定量方法を解説します。

はじめに

DMF抽出法は抽出に3日程度かかるが,アセトン抽出法の場合,短時間で抽出から定量まで行えるという利点がある。また,DMFが葉の組織に十分浸透しないようなクチクラ層の発達した葉でも,アセトン抽出法ならクロロフィル・カロテノイドの測定が可能である。ただし,この抽出法では,サンプルの葉の組織を十分に破壊することが必須である。

測定全体の流れ

  1. サンプルとなる葉からある面積の切片を切り抜く(この切片をleaf discと呼ぶ),またはサンプルとなる葉の面積を測定する
  2. leaf discを低温ですりつぶし(完全に組織を破壊す),そのサンプルに80%アセトンを注ぐ
  3. 試験管を遠心分離機にかける
  4. 上澄みを分光計で計測
  5. 吸光度からクロロフィル・カロテノイド量を算出

0. 準備するもの

  • リーフパンチ(あれば便利)
  • アセトン
  • 蒸留水
  • 液体窒素
  • 氷,氷水
  • ピンセット
  • メスシリンダー
  • 深めのバットまたはたらい(試験管立てが入る大きさが望ましい)
  • 試験管
  • 試験管立て
  • 撹拌棒
  • オートビュレット(あれば便利)
  • パラフィルム(試験管と同数をあらかじめ適当な大きさに切っておく)
  • 遠心分離機
  • 分光光度計
  • 石英ガラスのセル(分光光度計用)
  • ポリエチレン製手袋
  • 白衣・保護ゴーグル

溶媒(80%アセトン)の準備

アセトン8に対して蒸留水2を混ぜよく撹拌した上で,オートビュレット付属瓶に注いでおく。

氷(氷水)の準備

サンプルの温度が上がるとクロロフィルが分解してしまうため,作業中はできる限りサンプルを冷やしておく。氷(氷水)をはったバットに試験管たて・試験管をいれて,作業中は冷やしておけるようにする。

1. leaf discの切り抜き/葉面積の測定

2. クロロフィル・カロテノイドの抽出

大きなサンプルの場合,乳鉢にサンプルと液体窒素を入れて乳棒ですりつぶし,そこに一定量の80%アセトンを注ぐ。

ここではleaf discなど小さいサンプルの場合について説明する。

  1. leaf discを試験管に入れる
  2. この試験管に液体窒素を入れ,撹拌棒で凍った葉を細かく砕く(撹拌棒で粉々に割る)
  3. 十分に細かくなったら,試験管に80%アセトン4ml(吸光度が1を超えてしまう場合はもっと増やす)を注ぐ。
  4. 試験管にふたをする(合うフタがない場合はパラフィルムを使う)
  5. 試験管を振って,溶媒が緑に,サンプルの残りかすが白くなっていればOK(残りかすに緑色が残った場合は,上澄みの吸光度測定後,残りかすについて,液体窒素で凍らすところから繰り返す)
  6. 試験管は,氷水を張ったバットに立てておいて,温度が上がらないようにしておく

3.遠心分離

2の試験管の本数がある程度溜まったら,遠心分離機にかけ(5分くらい),葉の残りかすとクロロフィル・カロテノイドの溶けた溶媒とを分離する。

遠心分離機に試験管を並べる際は,バランスよく並べる。

4. 吸光度の測定

ガラスセルに溶媒を移す

遠心分離機にかけた試験管から,上澄みを石英ガラスセルに静かに注ぐ。うまく注げない場合は,ピペット,ピペットマンを使用し,残りかすがセルに入らないよう,注意する。

試験管に残った溶媒は,すぐに捨てず,またフタをして氷水の中に立てておく(分光光度計での測定に失敗したときの保険として)。

分光光度計

使用する分光光度計については,それぞれマニュアルをよく読むこと。

分光光度計では下記の波長の吸光度を測定する。

Porra et al. (1989) の式を使う場合(クロロフィルa, bのみ)

  • 663.6 nm
  • 646.6 nm

Wellburn (1994) の式を使う場合(クロロフィルa, b,カロテノイド)

  • 663.2 nm
  • 646.8 nm
  • 470 nm

測定後,セルに残った溶媒は廃液入れに捨てる。

5.クロロフィル(・カロテノイド)量の推定

Porra et al. (1989) の式

分子量で表す場合

Chl_a (nmol/ml) = 13.71 * A663.6 - 2.85 * A646.6

Chl_b (nml/ml) = 22.39 * A646.6 - 5.42 * A663.6

Chl_a+b (nmol/ml) = 19.54 * A646.6 + 8.29 * A663.6


重量で表す場合

Chl_a (ug/ml) = 12.25 * A663.6 - 2.55 * A646.6

Chl_b (ug/ml) = 20.31 * A646.6 - 4.91 * A663.6

Chl_a+b (ug/ml) = 17.76 * A646.6 + 7.34 * A663.6

Wellburn (1994) の式

Chl_a (ug/ml) = 12.25 * A663.2 - 2.79 * A646.8

Chl_b (ug/ml) = 21.5 * A646.8 - 5.1 * A663.2

Car_total (ug/ml) = (1000 * A470.0 - 1.82 * Chl_a - 85.02 * Chl_b) / 198

Last modified:2015/03/25 06:09:17
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