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レンズの公式と被写界深度

2023_0416 筑波大学OB 山一磨

Internal Server Errorで図が添付できなかった。まとめてダウンロードできるようにしたのでこちらからどうぞ → リンク

導出のpdfはこちらからどうぞ → リンク

焦点距離とレンズの公式

レンズに平行な光を入射するとある1点に集光します。このポイントを焦点といいます。 レンズが対称に作られていれば焦点はレンズの両側に存在します。 レンズから焦点までの長さを焦点距離fといい、この長さはレンズの材質や丸みで決まります。

下の図のように、レンズから距離aだけ離れた位置に赤い物体があるとします。 レンズの反対側の"ちょうどいい位置b"にスクリーンを置くと、スクリーン上に鮮明な像が現れます。 中学校の理科で、ろうそく・レンズ・スクリーンを使ってこんな実験しましたね。 スクリーンを置くべき"ちょうどいい位置b"を決めるのがレンズの公式でした (導出を確認したい人はページ冒頭にリンクしているpdfファイルをどうぞ)。

図1

カメラの仕組みも原理的にはこの実験と同じです。距離aの位置に写したい被写体があるとき、 ちょうどいい位置bにフィルムや撮像素子を置いて写真を撮ります。

図2

標準レンズと呼ばれる焦点距離50mmのレンズを使ったときの 被写体の距離aとフィルムや撮像素子の距離bとの関係を表にします。

被写体の距離撮像素子の距離
0.5m 55.6mm
1.0m 52.6mm
2.0m 51.9mm
5.0m 50.5mm
10m 50.0mm
50m 50.0mm

b=(af)/(a-f)なので、a→∞ で b→f に近づきます。

許容錯乱円と被写界深度

さて、距離aよりも手前や後ろに物体があるとそれらの像はどうなるでしょう。 下の図のように、手前にあっても後ろにあっても不鮮明な(=ボケた)像になります。 きっちり集光する位置から撮像素子がずれているからです。 レンズに入った光は3次元的に見ると円錐状の経路を取り、この断面を錯乱円と呼びます。 錯乱円の直径が0で厳密に集光していれば鮮明、そうでなければ不鮮明と言えます。

図3,4

とはいえ実質的には「これくらいの大きさならぼやけているようには見えない」ある種の閾値があり、 これを許容錯乱円と呼びます。デジタルカメラの撮像素子で考えると分かりやすいでしょう。 下の図のように、撮像素子は小さな素子が格子状に並んでいて、その素子の大きさが許容錯乱円の直径になります。 だいたい10μm〜80μmとのことです。

図5

そのため、距離aの位置の被写体よりもいくらか手前まで、またいくらか後ろまでは、 写真を撮ったときにボケてみえない範囲(言い換えると、ピントが合っているようにみえる範囲)が広がることになります。 この範囲を被写界深度(DOF; depth of field)と言います。 手前側のぎりボケない距離を近点と呼び、また被写体から近点までを前方被写界深度と呼びます。 同様に、後ろ側のぎりボケない距離を遠点と呼び、また被写体から遠点までを後方被写界深度と呼びます。

図6

有効口径とF値

被写界深度を決める重要なパラメータに有効口径があります。 デジタルカメラ入門 で 書いたように、カメラにはしぼりという機構があり、レンズから取り込む光を制限します。 絞りが開いている穴の直径が有効口径です。 イメージ的には下の図のように有効口径が小さいほど錯乱円が鋭くなるため、 被写界深度の範囲が広がります。

図7

カメラの世界では有効口径そのものよりも、有効口径で焦点距離を割った値(F値)を用います。 標準レンズ(焦点距離50mmのレンズ)を使ったときのF値と有効口径Dとの関係を表にします。

F値 有効口径
1.4 3.6cm
2.8 1.7cm
4.0 1.2cm
8.0 0.6cm
11 0.4cm

被写界深度を決める式

役者は揃いました。被写界深度は、被写体までの距離a, 焦点距離f, F値(有効口径), 許容錯乱円の直径εで決まります。 前方被写界深度DF, および, 後方被写界深度DRは以下の式になります (導出を確認したい人はページ冒頭にリンクしているpdfファイルをどうぞ)。

DF = a/((f2/(εFa)) + 1), DR = a/((f2/(εFa)) - 1)

被写界深度を深くしたい(広い範囲でピントが合っているようにみせたい)ならば、 DF, DRの値が大きくなるようにすればよいわけです。 そのためには、上の式から言って、(許容錯乱円の直径は固定値として)

  • 被写体までの距離aを大きくする。
  • 焦点距離fが小さい広角なレンズを用いる。
  • しぼりをしぼってF値を大きくする(有効口径を小さくする)。

このように対処すればよいことが分かります。 反対に、被写界深度を浅くしたいならば逆にすればよい。 ポートレートなどを撮るときに被写体のみにピントを合わせてその前後をめっちゃボケさせるという手法があり、 そういうときには「望遠のレンズを使って、しぼりをなるべく開いて、できるかぎり被写体に寄る」のがセオリーとされていますが、 その理由が上の式から分かります。

具体的に被写界深度を計算してみましょう。 湯飲みにピントを合わせた写真です。 1枚目の写真は、背景がボケているので被写界深度は浅いと言えます。 カメラから湯飲みまでの距離はだいたい1m, 焦点距離は21mm, F値は3.5, 許容錯乱円は0.019mmです。 DF = 1.3cm, DR = 1.8cm で被写界深度はおおよそ3cmです。 2枚目の写真は、背景も鮮明なので被写界深度は深いと言えます。 F値が22で他の値は1枚目と同じです。DF = 0.5m, DR=18m で被写界深度はおおよそ18mです。ぐっと広がりました。

図8,9

グラフにもしてみましょう。 下の左の図は1枚目の写真のパラメータで、被写体距離aに対して被写界深度がどのように変化するかを描いたものです。 上の計算結果のように、前方被写界深度と後方被写界深度は対称に広がるわけではなく、 前方被写界深度よりも、後方被写界深度の方が急激に広がっていくことが分かります。 右の図は2枚目の写真のパラメータで同様に描いたものです。F値が大きいので、被写界深度の広がり方はより急激です。 特に、1m付近で後方被写界深度はほぼ無限大に近づきます。 後方被写界深度が無限大に飛ぶときの被写体距離を過焦点距離と呼びます。 DRの式の分母が0に近づくときのaなので、a=f2/(εF)で計算できます。計算してみると、1,055mmとなります。 またこのとき、前方被写界深度はa/2になります。

図10,11

Last modified:2023/04/16 10:32:22
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