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ESA SNAPを使ったSAR画像解析2(SAR画像の準備)

衛星搭載のSAR(合成開口レーダー)の画像をダウンロードして、SNAPへ取り込んでみましょう。

以下はよく使われる衛星搭載SARです:

  • Sentinel-1 ... ESA(欧州宇宙機関), Cバンド, データ無料公開。2機編成なので回帰日数が短い。
  • ALOS, ALOS-2 ... JAXA, Lバンド。Lバンドは樹冠などの透過力が高く, 干渉性も高い。フルポラリメトリの観測が可能。
  • RADARSAT-2 ... CSA(カナダ宇宙庁), Cバンド。フルポラリメトリの観測が可能です。
  • TerraSAR-X ... DLR(ドイツ航空宇宙センター), Xバンド。

ここではデータ入手が無料・容易なSentinel-1を使います。ESAのOpen Access Hub (https://scihub.copernicus.eu/dhus/#/home)からダウンロードできます。ただしアカウントが必要。画面右上の人間マークをクリックしてから指示に従ってアカウントを作成してください。

Open Access Hubに飛んだら、左上の検索コーナーに

S1A_IW_GRDH_1SDV_20190503T204316_20190503T204341_027068_030CA5_8388

と入れてください。検索結果に出てきた画像のダウンロードURLをクリックすれば、ダウンロードが始まります。 COAH_S1_search.png

任意の場所の画像を使う場合には、この動画を参考に https://www.youtube.com/watch?v=wBp2pJxhnaw

Sentinel-1のファイル名の意味

Sentinel-1のファイル名(長い!)にはその画像の詳細情報が詰まっています。ESA公式の解説はここ( https://sentinel.esa.int/web/sentinel/technical-guides/sentinel-1-sar/products-algorithms/level-1-product-formatting )

今回使う以下のファイル名を読み解いてみましょう:

S1A_IW_GRDH_1SDV_20190503T204316_20190503T204341_027068_030CA5_8388
  • 最初の"S1A"はSentinel1-Aの画像を意味します。Sentinel1-Bの場合にはS1Bとなります。
  • 次の"IW"は画像取得のモードを示しています。"IW"は"Interferometric Wide"の略で、Sentinel-1の画像で最も一般的な撮影モードになっています(解像度5×20m、撮影幅250km)。
  • "GRDH"は"GRD"が画像のタイプを示しています。この場合は"Ground Range Detected"の略で、SARによる生の取得データを、地球を表すモデルの表面に投影した状態のデータになっています。"H"は解像度の段階を表しており、"High Resolution"の略となっています。
  • "1SDV"は"1"が処理レベルを表しています(レベル1プロダクト)。"S"は"SAR Standard"クラスであることを示しています。"DV"はSAR画像を使う上でとても重要な要素の一つの偏波の種類を示しています。この場合は"Dual HH/HV"の画像となっています。つまりこの画像はHH(水平偏波送信/水平偏波受信)とHV(水平偏波送信/垂直偏波受信)の観測結果から作られたデータです。
  • その後の数字の羅列"20190503T204316_20190503T204341"は"データ取得開始日時T時刻_データ取得終了日時T時刻"を示しています。
  • 残りの数字は衛星の軌道データやミッションIDなどを示していますが、詳細についてはESAの公式ガイドを参考にしてください。

SAR画像の下準備

SAR画像はLandsatなどで撮影された通常のデータと多くの異なる特徴を持っています。大気中の水蒸気量や電離層の影響に加え、特に問題となるのが以下の3点です。

  • スペックル
  • キャリブレーション
  • 幾何学的な歪み

スペックルは「SAR画像に現れるごま塩状の点」で、画像がチラチラとしていて見づらいのに加えて、 SAR画像を使って土地被覆や植生の分類をする上では誤分類の原因となってしまいます (例 https://javaboys74.wordpress.com/2015/07/19/speckle-in-sar-synthetic-aperture-radar/)。スペックルが生じる原因は「画素内にランダムに分布した散乱体による振幅は同じだが、位相が異なる反射波の干渉」です。位相が異なるとランダムに強め合い・弱め合いが生じてしまうので、画像にはごま塩状に明るい点と暗い点が生じてしまいます。様々な対処法がありますが、よく使われているのはマルチルックとフィルタがけです。レベル1のGRDプロダクトでは既にマルチルック処理が為されているので、フィルタがけによるスペックル低減を行います。

キャリブレーションとは、衛星上で観測されたデータを地上における後方散乱係数へと変換する操作です。これによって、複数の画像を比較・検討することができます。

幾何学的な歪みはレイオーバーやフォアショートニングと呼ばれる問題で、SAR画像は「衛星から対象までの距離」を測ることで画像を生成していることに由来しています。つまり山の山頂などは衛星に対して距離が近くなり、実際の地上における状態と比べて衛星側に近づいた様に表示されてしまいます(フォアショートニング)。 このサイト(https://www.sed.co.jp/sug/contents/edu/edu9a_sarexampleuse.html)は参考になると思います。この歪みはDEMを使って補正されます。

それでは、ダウンロードしたSAR画像の下準備を行ってみましょう。

メモリの拡張

  • SAR画像の処理には相当のRAMを消費します。そのためデフォルトの設定のままでは干渉SARや、作成した画像のエクスポートができません(メモリ不足の表示が出てしまう)。PC本体に積むメモリは32GB以上が望ましいです。16GBでも動くようですが、処理に時間がかかってしまうかもしれません。
  • SNAPのディレクトリ内にetcのディレクトリがあると思います。etcの中にsnap.confというファイルがあるので、viを使って開いてください。viの使い方がわからない場合は テキストエディター vi を参考にしてください。
  • "-J-Xmx◯◯◯"(◯◯◯には何かの数字が入っています)の欄を書き換えてください。例えば"-J-Xmx22G"と書けば、snapは最大で22GBのメモリを使うことができます。22GBの状態で干渉SARなどの操作は問題なく行えました。もし処理時にメモリ不足の表示が出た場合、適宜この欄を調整してください。

ファイルを開く

  1. FileからOpen Productを押して、先ほどダウンロードしたSAR画像ファイルを選択してOKを押してください。これでSNAPへと画像が取り込まれます。(Zipファイルを解凍する必要はありません)
  2. Product Explorerにファイルが表示されていると思うので、ファイル横の三角形を押してください。MetadataやVector Dataなどいくつかのフォルダが表示されます。画像本体が格納されているのはBandsのフォルダとなっています。
  3. Bandsのフォルダを押すとAmplitude_VHやIntensity_VHといったファイルが表示されるので、Amplitude_VHをダブルクリックしてみましょう。これで画像が表示されます。
  4. 開かれたSAR画像を眺めてみると、鏡面反射の影響で霞ヶ浦や海などの水面は暗く、二回反射の影響で市街地や建物の密集した東京周辺と景品工業地帯は明るく写っていることがわかります。東京湾に見える沢山の点は、おそらく大型の船舶と考えられます。

スペックルを低減する

  1. 開かれた画像は前述のスペックルの影響でチラチラとしているので、フィルタをかけてスペックル低減を行います。
  2. 上部のRadar→Speckle Filtering→Single Product Speckle Filterを選んでクリックしてください。スペックルフィルタについてのメニューが開かれます。
  3. I/O Parametersはそのまま、Processing parametersではFilterにLeeを選んでください。Runを押せばフィルタリングが実行されます。
  4. Product Explorerに新たなフォルダ([2])が作成されているので、BandsからAmplitude_VHをダブルクリックしてください。
  5. スペックル低減前の画像と比べてみると、特に河川敷や水面など暗い場所でスペックルが低減されているのがわかります。

キャリブレーションを行う

  1. 上部のRadar→Radiometric→Calibrateを選んでクリックしてください。
  2. 初期設定のままで大丈夫なので、Runを押しましょう。
  3. Product Explorerに新たなフォルダ([3])が作成されているので、BandsからSigma_0VHをダブルクリックしてください。

幾何補正を行う

  • 関東山地の方を拡大して見てみましょう。SNAPの左下に小さめの画面と、半透明な長方形が表示されていると思います。この長方形の領域は現在大きな画面で表示されている領域になっています。マウスカーソルでこの長方形を見たい場所に動かしてから、大きい画面上でマウスホイールを回せば拡大・縮小を行うことができます。
  1. 山地にフォアショートニングの効果が生じているのが確認できます。そのため、これを幾何補正で軽減します。
  2. 上部のRadar→ Geometric→ Terrain Collection→ Range Doppler terrain Collectionを選んでクリックしてください。
  3. Processing ParametersではSigma0_VHをクリックして選択したら、Runを押しましょう。(VHのみについて行うのは処理時間を短くするためです)
  4. 処理には数分程度かかります。処理が完了したら新たなフォルダ([4])が作成されているので、BandsからSigma0_VHをダブルクリックしてください。
  5. 関東山地のフォアショートニングが軽減されているのがわかると思います。
Last modified:2020/08/20 17:26:47
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