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1tの二酸化炭素は木何本分に相当するか?

2018/10/20 流域研OB山

研究室メンバーだけ見れるサイトに2013/10ごろに作成したページを転載。 もう5年も前なのか……。内容としては一般に通用するものなので問題ないとは思います。

この内容で、2013/10/09の流域ゼミで発表をしました。 そのときの動画をこちらに公開しています。 文章より動画の方がわかりやすいという方はどうぞこちらを → YouTube

はじめに

大気中の二酸化炭素が植物に吸収され,炭素として蓄積されることは,いまや誰もが知っています。しかし,次のように問われると,少し困ります:

「ここに生えている木はどれくらいの炭素を蓄えているのか? 」 ...問(1)
 あるいは,
「ここに生えている木は,ここまで大きくなるまでに,どれくらいの二酸化炭素を吸収したのか?」 ...問(2)

実は,これらの値を計算するのはそれほど難しくありません。 もちろん,精密な値を出そうとすればするほど面倒になってきますが, ざっくりと推定するくらいであれば,かけ算だけで計算できます。

ここでは,「ざっくり」をメインコンセプトとして,上の2つの問いに答える推定式を考えます。 そして,具体的に,以下の主張の「XX」にどんな数値が入るか,答えを出します:

「人工林で30年育ったスギXX本は,30年のあいだに,1tの二酸化炭素を吸収・蓄積している」

XXに入る数はどれくらいのものでしょうか? 1本? 3本? 5本? 10本? 100本? トリビアの種みたいですね(なつかしい)。


※ 次の文献を特に参考にしていますが,以下の計算は山が独自に行なったものです。検証なしの過信は危険です。

  • 日本の森林による炭素蓄積量と炭素吸収量」, 松本光朗, 2001
    • 日本森林学会が出している,一般向けの雑誌「森林科学」の記事。森林科学は,2年以上前のバックナンバーに限ってCiNiiから閲覧可能。
    • 本ページの文中における「(松本 2001)」という注釈は,この文献内の情報に拠ったことを明示するものです。
  • 日本国温室効果ガスインベントリ報告書 2013年4月版」 温室効果ガスインベントリオフィス
    • 本ページの文中における「(GIO 2013)」という注釈は,この文献内の情報に拠ったことを明示するものです。

1tの二酸化炭素は,体積にするとどれくらいか?

ところで,「1tの二酸化炭素」と重量で言われてもどれくらいのものかピンと来ません。体積で言うとどれくらいになるか,本題に入る前に計算してみましょう。

標準状態(0℃,1気圧)において,1molの気体は22.4lの体積を占めます。 二酸化炭素の分子量は44なので(C: 12,O:16 → CO2: 44),1tの二酸化炭素は約23,000molに相当します。

1t * 1000kg/t * 1000g/kg ÷ 44g = 22727.27...

23,000molは,22.4lをかけると,約520,000l,つまり,520 m^3 の体積を占める。 3√520は,だいたい8。つまり,1tの二酸化炭素は,8m*8m*8mの空間を占めるくらいの体積。
空気を含まない純粋な二酸化炭素が8m*8m*8mを占める。いま私がいる研究室の容積は,だいたい,8m*8m*2.5mくらいなので,この部屋3.2つぶん。
……体積にしてもあまりピンと来ませんでした。


概要 -何を推定すればいいか-

さて,本題です。

植物は,大気中の二酸化炭素を吸収します。 光のエネルギーを用いて,水と,吸収した二酸化炭素から炭水化物を合成します。光合成です。
合成された炭水化物は,ボディを構成するために使われたり,栄養として蓄えられたりします。

植物は,二酸化炭素を吸収するだけでなく,放出することもします。呼吸です。 呼吸を行なうことで,炭水化物の異化を行い,生命活動に必要なエネルギーを炭水化物から取り出します。
このとき,副産物として生成される二酸化炭素を大気に放出します。 ゆえに,光合成のために大気から吸収した二酸化炭素も,呼吸によって大気に放出されてしまえば,樹木に蓄積されたとは言えません。

しかし,逆に言えば,呼吸によって放出されなかった二酸化炭素は,すべて樹木に取り込まれ炭素(炭水化物)として蓄積されていると考えられます。
つまり,いまこの木が蓄えている炭素の量この木が,これまでに吸収した(正味の)二酸化炭素の量 は, 互いに密接に関係していると言えます。

つまり,冒頭の2つの問い,

「ここに生えている木はどれくらいの炭素を蓄えているのか? 」 ...問(1)
「ここに生えている木は,ここまで大きくなるまでに,どれくらいの二酸化炭素を吸収したのか?」 ...問(2)

これはどちらもほとんど同じことを問っていることになります。

そして,いまこの木が蓄えている炭素の量 は,当然,その木の量(体積あるいは重量) と密接に関係しているでしょう。

ところで,光合成を行なう部位(つまり葉)を同化器官と呼び, 光合成を行なわない部位(つまり,幹・枝・根など)を非同化器官と呼びます。
この用語を踏まえて,いままでに述べたことを再述すると,

樹木は,同化器官において光合成を行い,吸収した二酸化炭素を炭素として非同化器官に蓄積する。

このあたりの関係を整理すると,以下のような繋がりが見えてきます:

非同化器官の体積 <-密度-> 非同化器官の重量 <-炭素含有率-> 非同化器官に蓄積された炭素の重量(問(1)の答え) <-CとCO2の分子量の比-> これまでに吸収された二酸化炭素の重量(問(2)の答え)

以降,これらの関係を順に考えていきます。

※Tips

  • 同化とか異化とかわかんない,って人は,高校生物IIをやるといいでしょう。

幹・枝・根の体積

「非同化器官」と呼ぶのも堅苦しいので,これ以降, 非同化器官のことを「幹・枝・根」と表現します。まどろっこしいことには変わりないですが。

さて,まず最初に,幹・枝・根の体積を推定してやる必要があります。

ところで,地上に出ている部位(幹・枝)について "詳細に" 計測するには, おそらく,地上3Dレーザースキャナ が最も有用でしょう。
しかし,ここでは "ざっくり" と推定を行なうのがメインコンセプトなので, レーザースキャナの使用は考えません。

(レーザースキャナを使わずに)幹・枝・根の体積を推定する際には,通常,次の2つのステップを踏みます:

  • 1. 幹の体積を推定する。
  • 2. その値から,幹・枝・根の体積を推定する。

1. 幹の体積を推定する。

よく行われる方法は,アロメトリー式を使うものです。
しかし,アロメトリー式を調べるのも面倒なので,ここではもっとざっくりした手段を用いましょう。
幹の形はシンプルであると仮定します。とりあえず,円錐状であると考えましょう。
胸高直径(DBH ...単位はm)と樹高(height ...単位はm)を計測すれば,次の式で幹の体積を求めることができます:

幹の体積 (m^3) = (1/3) * ((DBH/2)^2 * pi) * height ...(円錐の求積公式,piは円周率)
(よく考えると,DBHではなくて,根元での直径を用いなければなりませんが,ここではDBHでOKとします。ざっくり,ざっくり)

2. その値から,幹・枝・根の体積を推定する。

上の式から幹の体積を推定することができました。 続いて,この値から,幹・枝・根すべてを含む体積を推定します。
ここで,我々は,非常に便利な値を用いることができます。 拡大係数 (Expansion Factor) と呼ばれる値です。拡大係数は,次のように定義されます(松本 2001):

幹・枝・根の体積(つまり,樹木全体の体積) / 幹の体積

つまり,幹の体積に拡大係数を掛ければ幹・枝・根の体積を推定することができます。

拡大係数は,樹種によって,また樹齢によって,異なる値を取ります。
また,当然,同じ樹種・同じ樹齢によっても個体差のある値ですから,あくまでも,「平均を取ったらこれくらい」という値です。
拡大係数は,針葉樹では1.7,広葉樹では1.8という値が用いられます(松本 2001)。ここでは,間を取って,1.75という値を採用します。 つまり,

幹・枝・根の体積 = (1/3) * ((DBH/2)^2 * pi) * height * 1.75

※Tips

  • 拡大係数は,「バイオマス拡大係数」とも呼ばれます。(BEF: Biomass Expansion Factor)
  • 拡大係数は,根は含まず,樹木の地上部分の体積 / 幹の体積 と定義されることもあります(GIO 2013)。
  • 次のような値も存在します: R-S比(Root-Shoot比) 根の体積 / 樹木の地上部分の体積
  • 「拡大係数やR-S比は,樹種・樹齢別に考えれば,それほど個体差は大きくない」と示した報告もあります(どこに書いてあったか忘れた)。

幹・枝・根の重量

幹・枝・根の体積を見積もることができました。 続いて,この値を重量に変換します。そのためには,樹木の密度(=容積密度)が分かればOKです。

注意: 一般的に「容積密度」というと,樹木を乾かしたときの密度を指します。 樹木に含まれる水をすべて蒸発させたときの密度です。

ここで,次の2つの仮定を導入します:

仮定: 同じ樹種間では,容積密度について,それほど個体差はない。
仮定: 幹・枝・根は,部位に関わらず,容積密度は同じであるとみなす。

ただし,容積密度は樹種によって異なる値を取ります。 まあ,「ざっくり」がメインコンセプトなので,ここでも平均的な値を用いましょう。
針葉樹では0.37t/m^3,広葉樹では0.49t/m^3という値が用いられます(松本 2001)。 ここでは,間を取って,0.43t/m^3を採用します。 つまり,

幹・枝・根の重量(t) = (1/3) * ((DBH/2)^2 * pi) * height * 1.75 * 0.43

※Tips

  • 「容積密度」という用語は,(松本 2001)でも,(GIO 2013)でも用いられていますが,それほど一般的な用語ではない気がします。

幹・枝・根に蓄えられた炭素の重量

幹・枝・根の重量を見積もることができました。 続いて,この値を,炭素の重量に変換します。 そのためには,幹・枝・根の重量に対する炭素含有率が分かればOKです。

一般的に言って,幹・枝・根を構成するメインの元素は, 炭素(C),水素(H),酸素(O)の3つのみです。この3つで,99%を占めます(松本 2001)。
幹・枝・根の重量における炭素・水素・酸素の比をCHO比と呼びましょう。 CHO比は,樹種によって差異がほとんどないことが知られています。 樹種間の差異は,せいぜい2%です(松本 2001)。
(従って,「ざっくり」をコンセプトとするこの考察でも,この値は,最終的な値にそれほど大きな影響を及ぼしません)

また,1つの仮定を導入します:

仮定: 非同化部分は,部位に関わらず,CHO比は同じであるとみなす。

さて,CHO比は,次のような比率です(松本 2001):

C:H:O = 0.50:0.06:0.43

つまり,幹・枝・根の(乾)重量の半分が炭素で,残りの49%が水素と酸素から構成されているわけです。

つまり,

幹・枝・根に蓄えられた炭素の重量 (C-t) = (1/3) * ((DBH/2)^2 * pi) * height * 1.75 * 0.43 * 0.5

これが,冒頭の問(1)

「ここに生えている木はどれくらいの炭素を蓄えているのか?」

への答えになります。 拡大係数や密度については平均値を用いたので,この式は,樹種や樹齢に関わらず使うことができます。もちろん,そのぶん「ざっくり」した値になりますが。

※Tips

  • 化学物質の重量を示す際,重量の単位に化学式を付記することがあります。
    例: 炭素の場合: C-t,二酸化炭素の場合: CO2-t,窒素の場合: N2-t 実体としては,「t」と同等です。
  • 「CHO比」という言葉は私が勝手に作った言葉です。
  • 「樹種によらずCHO比がだいたい同じになる」理由を本ページ最下部で考察しています。

これまでに吸収された二酸化炭素の重量

幹・枝・根に蓄えられた炭素の重量を見積もることができました。 続いて,この値を,これまでに吸収された二酸化炭素の重量に変換します。これが最後の変換です。

炭素の源は,光合成によって取り込まれた大気中の二酸化炭素しかありません。 植物は,根から炭素を吸収することはしません。葉から二酸化炭素を取り込むのみです。
そのため,幹・枝・根に蓄えられた炭素は,すべて,大気から取り込んだ二酸化炭素由来であると言えます。 つまり,蓄積されている炭素1mol は,取り込まれた二酸化炭素1molに対応するのです。
炭素(C) 1molは12gに相当します。二酸化炭素 1molは44gに相当します。つまり,樹木に12gの炭素が蓄積されていれば,その樹木は,過去に44gの二酸化炭素を吸収したことになります。
つまり,幹・枝・根に蓄積されている炭素重量に44/12をかければ,吸収された二酸化炭素の重量を推定できます。

これまでに吸収された二酸化炭素の重量 (CO2-t) = (1/3) * ((DBH/2)^2 * pi) * height * 1.75 * 0.43 * 0.5 * (44/12)
↓数値をまとめると:
これまでに吸収された二酸化炭素の重量 (CO2-t) = 0.36 * DBH^2 * height ...推定式(1)

これが,冒頭の問(2)

「ここに生えている木は,ここまで大きくなるまでに,どれくらいの二酸化炭素を吸収したのか?」

への答えになります。 拡大係数や密度については平均値を用いたので,この式は,樹種や樹齢に関わらず使うことができます。もちろん,そのぶん「ざっくり」した値になりますが。

※Tips

  • 上に書いたことには間違いが含まれています。樹木は成長するうちに枝を落とすため,その樹木がこれまでに吸収した(正味の)二酸化炭素をすべて勘案するならば,
    落とした枝に含まれていたはずの炭素量まで調べる必要があります。

人工林で30年育ったスギXX本は,30年のあいだに,1tの二酸化炭素を吸収・蓄積している

では,いよいよ,上の式を用いて,「1tの二酸化炭素は木何本分に相当するのか」を計算してみましょう。

茨城県で植林されて30年が経過した人工林のスギがあるとします。 次の報告書によると,このようなスギの平均的な胸高直径は22.8cm,樹高は18.2mとのことです。
※茨城地方すぎ林林分収穫表(地位1等での値を採用): http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/shukakushiken/02gyoken/02gyoken_23.pdf

もちろん,植林されて30年経ったスギでも,地域による差や,土地の状態や,植栽密度によって, 平均的な胸高直径や樹高は変わってきます。しかし,とりあえずここでは上の値を採用することにしましょう。

胸高直径と樹高を上の式に代入すると,

DBH = 0.228 m
height = 18.2 m
これまでに吸収された二酸化炭素の重量 (CO2-t) = 0.38 * DBH^2 * height = 0.34 t

つまり,この条件であれば,1本のスギが30年育つまでに吸収する正味の二酸化炭素は,0.34 t。 つまり,1tの二酸化炭素は,3本の30年生のスギに相当することがわかりました。
どうでしょう,3本というのは,思ったよりも少なかったでしょうか? 多かったでしょうか? あるいは妥当だったでしょうか?

もちろん,この推定式は,様々な欠陥を持っています。しかし,あくまで「ざっくり」と計算した結果,

「スギ3本が30年育つまでに1tの二酸化炭素を吸収する」

ということがわかりました。10本単位でも,100本単位でもなく,3本くらいとわかったのは1つの成果です。

※Tips

  • 人工林においては土地の状態を「地位」と表現します。3〜5段階の数値で表し,数値が小さいほどその土地の状態がいいことを表します。
  • 人工林においては,地位と樹高に相関があり(地位が良いほど樹高が高くなる),植栽密度と胸高直径に相関がある(植栽密度が低いほど胸高直径が大きくなる)ことが知られています。
  • 「スギ」という樹種を採用したのは,まあ日本の樹種といえば,スギかヒノキかなと思ったくらいの理由です。
  • 「30年生」という値を採用したことに特別の意味はありません。30年ってキリがいいかなと思って…。
  • ちなみに,日本の2011年度のCO2総排出量を日本国民1人あたりの年間排出量に換算すると9.71tだそうです。(GIO 2013) 2.1.2節

もうちょっと精密に計算する

上の推定式は,ちょっとざっくりしすぎかも知れません。 上の推定で適当だった以下の3つの値を修正して計算しなおしてみましょう:

  • 1. 幹が円錐状だと仮定した → アロメトリー式を使う。
  • 2. 拡大係数が平均値だった → 針葉樹の値を使う。
  • 3. 容積密度が平均値だった → スギの値を使う。

1については,1970年に林野庁が発行した「立木幹材積表 東日本編」を参照します。 これによると,茨城周辺に生育するスギの幹の体積に関するアロメトリー式は以下です:

(DBH 12cmから30cmの場合) log v = 1.85 log d + 1.01 log h - 4.22
ただし,vは幹の体積(m^3),dは胸高直径(cm),hは樹高(m)。logは常用対数。

d=22.8cm,h=18.2mを代入すると,v=0.37m^3。 ※ 円錐の式で計算すると,v=0.25m^3 です。けっこう違います。

2,3については,(松本 2001)を参照します。

拡大係数: 針葉樹なので1.7
容積密度: スギはばらつきがありますが,あいだを取って,0.316

以上の値を用いて推定式を修正すると,

これまでに吸収された二酸化炭素の重量 (CO2-t) = 0.37 * 1.7 * 0.316 * 0.5 * (44/12) = 0.36 t ...推定式(2)

ざっくり計算した場合とほぼ同じでした……。
(正直に言って,同じくらいの値になるとは考えていませんでした。むしろ,「やっぱり,ざっくりした計算はざっくりした計算に過ぎないね」と言いたかった……)
しかし,幹の体積も拡大係数も密度も,こちらの計算で用いた値の方が現実に近いものなので,ざっくり計算して出てきた0.34tよりも,いま出た0.36tの方が正確だと言えます。(具体的に数値では示せませんが)

もし,より精密な値を得たければ,次のような方法が考えられます:

- レーザースキャナを使って幹・枝の体積を詳細に求める。
- 拡大係数を,その地域・その樹種特有の値を用いる。
- 容積密度を,その地域・その樹種特有の値を用いる。
- CHO比を,その地域・その樹種特有の値を用いる。

実は,れっきとした計算方法です

冒頭の2つの疑問に答えるために,ざっくりした推定式を考えてきました。
しかし,どうでしょうか。「ざっくり」と言いつつも,手間やコストを考慮すると,推定式(1),あるいは,推定式(2)は,そんなに悪くない推定式だと思いませんか?

実は,推定式(1)や推定式(2)を導くために考えた炭素蓄積量(あるいは二酸化炭素の吸収量)の算出方法は,世界標準のものです。
(ただし,幹の体積の算出には,アロメトリー式が用いられる(はず。算出方法は各国に委ねられている))

IPCCという名前は聞いたことがあると思います。日本語だと,「気候変動に関する政府間パネル」です。 地球温暖化についての知見を集積・整理・検討して,報告書を発表している団体です。
IPCCの主な仕事はその報告書を作成することですが,それだけではありません。 UNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)を締結している国は,
自国の温室効果ガスの排出と吸収の目録(インベントリ)を作成して,公にする義務を負っています。 (気候変動枠組条約第4条・第12条および京都議定書第7条)

そのインベントリを作成する際に,各国が同一の基準を用いて排出量や吸収量を算出せねば混乱が生じます。
その「同一の基準」となるガイドラインを作成するのもIPCCの仕事です。

正式名称:  "IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories"
「気候変動に関する政府間パネル国別温室効果ガス排出インベントリガイドライン」
通称: IPCCガイドライン
ガイドライン
指標・指針・誘導指標・指導目標などと訳される。
組織・団体における個人または全体の行動(政府における政策など)に関して、守るのが好ましいとされる規範(ルール・マナー)や目指すべき目標などを明文化し、
その行動に具体的な方向性を与えたり、時には何らかの「縛り」を与えるもの

推定式(1)や推定式(2)の考え方は,概ね,このIPCCガイドラインに沿ったものです。 そして,いままで参考文献として挙げてきた文献(GIO 2013)は,まさに,日本の「温室効果ガスの排出と吸収のインベントリ」です。
この文献の7章に挙げられている,「生体バイオマスの炭素ストック量」の算出方法が,上で示した方法とほぼ同じであることがわかるでしょう。 (幹の体積の算出方法や,拡大係数の定義は微妙に違いますが)

より深いソースにあたりたいならば,2006年に発行されたIPCCガイドラインを参照してください:
http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/public/2006gl/index.html ここのVOLUME 4の,CHAPTER 2の10ページあたり。

おまけ

CHO比は,なぜ樹種によらずほぼ一定なのか。

上に書いたように,樹木のCHO比は樹種に寄らずだいたいこうなる:

C:H:O = 0.50:0.06:0.43

これは実験事実のようです((松本 2001)に依ると,林業試験場というところが1982年に発行した「木材工業ハンドブック」という本に掲載されているようです)。

なぜこのような比率になるのか,木を構成する高分子の割合とそれらの分子式から,ある程度まで説明できます。

  • 木を構成する主な高分子は次の3つ: セルロース,ヘミセルロース,リグニン。この3つで,全成分の約95%を占めるそうです。ソース
  • それぞれの組成比は,セルロースが約50%,ヘミセルロースが約20%,リグニンが約20~30%とのことです。ソース
  • それぞれの分子式は,セルロースが (C6H10O5)n,ヘミセルロースが(C5H8O4)nまたは(C6H12O6)n,リグニンが(C9H10O2)nまたは(C10H12O3)nまたは(C11H14O4)nです。

どの分子式を採用するかで結果変わりそうですが,まあここでは以下の値で計算してみましょう:

  • セルロース C6H10O5 50%
  • ヘミセルロース C5H8O4 20%
  • リグニン C9H10O2 25%

黙々と計算:

  • Cの分子量 = 0.5 * (12 * 6) + 0.2 * (12 * 5) + 0.25 * (12 * 9) = 75.0
  • Hの分子量 = 0.5 * (1 * 10) + 0.2 * (1 * 8) + 0.25 * (1 * 10) = 9.0
  • Oの分子量 = 0.5 * (16 * 5) + 0.2 * (16 * 4) + 0.25 * (16 * 2) = 60.8
    • C:H:O = 75.0 : 9.0 : 60.8 = 0.52 : 0.06 : 0.42

微妙に違いますが,だいたい合ってます。

Last modified:2018/10/21 13:46:23
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