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とらりもん - 機械いじりの心得 Diff

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!!作成者
* 2013_0716 奈佐原顕郎 加筆
* 2010_0821 奈佐原(旧姓西田)顕郎

[[筑波大学安全衛生マニュアル|http://anzenmon.jp/category/tsukuba/]]

!!はじめに

研究するには、いろんな場面で機械をいじらねばなりません。パソコンはもちろんそうだし、各種の測定装置は機械だし、自動車もエアコンも電灯も冷蔵庫も機械です。

機械は不適切な使い方をすると、壊れたり、時には危険なことになったりします。一般消費者向けの機械(家電や自動車など)は、メーカーが入念に耐用試験したり安全設計してますので、変な使い方をしてもヤバいことにはなかなかなりませんが、それが故に、多くの若者は「機械を使う怖さ」を知らなかったりします。実際、一般家電を使うかんじで研究用の測定機械を使うと、すぐに壊れるし、危ないことになります。それに、一般家電だって、本当は危ないのです。

ここでは研究室で機械を使うときの、おおまかなノウハウを述べます。原則的に、以下のポリシー(哲学)が重要です:

* 安全第一。
* 機械を丁寧に扱う。
* 関連文書を保管し、記録する。

!!安全第一。いや、マジで。

さて、機械いじりにおいて、最大の優先事項は安全です。何にもまして、安全第一です。研究のために安全性を犠牲にすることは許されません。あなたが怪我をしたり死んでしまえば、まわりの多くの人が迷惑を受けます。まわりを巻き添えにしたらもっと悲劇です。大事故が発生した研究室は、閉鎖されることもありえます。

機械いじりでの安全を確保するために、以下に気をつけましょう:

* 「いまここで事故が起きるとしたらどういう事故か?」をいつも考え、その対策をしよう。最悪のシナリオを想定することが重要。電気を使う機械で特に危ないのは、感電と発火です。可動部分がある機械で特に危ないのは、可動部が人体に当たって人が怪我をすることです。
* 操作や結線は、単独でやるか、もしくは、誰か一人の指揮のもとでやること。ひとつの機械を複数の人が同時にいじるのは極めて危険です。一人が機械をチェックしている時に、別の人がその機械の電源を入れたら、チェックしていた人は感電したり怪我したりする危険があります。大きな機械や、離れた機械どうしをケーブルで結線してあるものを設置したり操作するとき、複数の人が共同作業することがありますが、必ず誰かリーダーを一人決めて、全員がその指示だけに従うようにしてください。
* 移動作業や調整作業は、できる限り電源を抜いてやろう。電源ケーブルがつながっていなければ、多くの機械は電気的には安全です(ただしコンデンサに溜まった電気などもあるので一概には言えない)。電源スイッチを切るだけでは不十分です。何かのひょうしにスイッチが入ってしまうかもしれません。
* まわりの人に、何をやろうとしているのかを説明し、用のない人には離れていてもらおう。
* まわりに誰もいない・誰も知らない状況で作業することは、できるだけ避けよう。上の記述と矛盾するようですが、事故があったとき、一人だけではどうにもならぬことが多いです。そのためにも、夜間・休日の作業はなるべく避けること。事故が起きたら、その対応(救出・搬送・治療など)も困難になります。たとえまわりに人がいても、病院は閉まっています。
* 整理整頓、清掃を心がけること。ケーブルの配線などを乱雑なままにしてはいけません。電気の短絡(ショート)につながり、発火・感電の危険があります。
* 火事を防ぐには? ... 小学校で、「燃えるときの3つの条件」を習いましたね: 燃えるものの存在・酸素の存在・高い温度, です。火事を防ぐには, この3つが揃うことを防げばよいのです。たとえば、高温になる機械のまわりや、発火しやすいコンセント・電源接続部のちかくに、燃えやすいもの(紙や布、プラスチック製品など)を置くのは愚かなことです。ごみやほこりも「燃えるもの」として危険です。意外に危ないのは、金属を切削してできた金属粉です。携帯カイロと同じ原理で、金属粉は酸化しやすく、高温になります。高温が実現するのは、熱が周囲に伝導するよりもはやく熱が発生する場合です。発熱する機械のまわりには、十分に放熱できる空間を確保することが重要です。
* [[フェイル・セーフ|https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%95]], [[フール・プルーフ|http://e-words.jp/w/%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%95.html]]の考え方を理解し, 実践すること。

!!機械を丁寧に扱う。

とにかく機械を壊さないように気をつけましょう。機械を丁寧に扱うことは、安全対策上も重要ですし、機械を長持ちさせて、良い性能を発揮させるためにも重要です。

* テーブルの上に機械を置くときは、できるだけテーブルの奥(真ん中)に置こう。テーブルの端に機械を置くと、なにかの拍子に落下することがあります。脇を人が通るときにひっかけたり、地震が来たり。
* トランク型のケースに収納するときは、ケースが倒れないように。縦に置くのではなく、横倒しにして置く方が無難です。落ちそうなものは最初から床におき、倒れそうなものは最初から倒して置くことが賢いやりかたです。ただし、床に置いたらほこりなどに弱かったり人がつまづいたりという危険があるし、ボンベなどは決して横倒しに置いてはいけないことになっていますので、臨機応変な判断も重要。

!!関連文書を保管し、記録する。

機械にはマニュアルや保証書がついていますが、いつでもすぐにそれらが取り出せるように、保管しましょう。また、以下の情報を記録し、いつでも参照できるようにしましょう。
* いつ買ったか?
* いつどのような消耗品を交換したか?
* いつどのようなトラブル・故障が発生したか?
* いつどのような修理をしたか?
* フィールドに設置するときは, いつどこにどのくらいの期間、設置したか?

!!よくあるトラブル
* 接触不良: ジャック型の接続端子(イヤホンとパソコンや携帯音楽プレーヤーをつなぐところのアレ)は, 長期間, 挿しっぱなしにしておくと, バネの弾性(反発力)がなくなって, 接触が悪くなる。
* サビ: 種類の違う金属同士が接触したところに水がかかると, 電池の原理でイオン化傾向の高い金属が酸化します。ボルト、ナット、ワッシャー、座バネなどは, 同じ金属素材のものを使うのが鉄則。
* 電池の液漏れ: 機材に電池が入れっぱなしになって長期間放置されていると, 電池が腐食して液漏れし、機械を壊すことがあります。