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とらりもん - ラマン散乱 Diff

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「非共鳴のラマン散乱では入射光の周波数は電子励起の周波数からかなり離れており,電子を定常状態に励起しないが,非常に短い時間であれば,光は電子を仮想的な準位に励起することができる。入射光ωiの吸収により電子状態は仮想的準位に励起され,その後すぐに電子的基底状態へ脱励起されるが,その際,振動状態は最初のエネルギー状態よりもひとつ上の準位へ遷移し(フォノンが1つ励起される),振動エネルギー\hbar ωμ を失った光子が放出される過程がStokes 散乱に対応する。同様に,ひとつ下の振動状態へ遷移し(フォノンが消滅する),振動エネルギー\hbar ωμを得た光子が放出される過程が反Stokes 散乱に対応している。」「光の散乱」テキスト 物理工学専攻 H20 後期 光計測工学 福井大学

http://fir.u-fukui.ac.jp/thzlab/files/Lectures/Tani/optical_scattering.pdf

... つまり, レーリー散乱・ラマン散乱の連続スペクトルは, 「定常状態のエネルギー準位」ではない, ごく短い時間の, 非定常の(仮想的な)エネルギー準位に対応する遷移であり, 光子吸収と放出が同時に起きる。その出発状態と終了状態が同じならレーリー散乱であり, 違うならラマン散乱である。

ラマン散乱に寄与するのは, 分極Pの時間変動ではなく, 分極率αの時間変動。Pが時間変動すればそれ自体から光が出るが, αの時間変動自体からは光は出ない。P=αEだから, Eが乗って初めてPの時間変動になる。

分極率は格子振動(原子振動; フォノン)によって変わる。格子振動は温度によって強度が変わる。従ってラマン散乱は温度を反映する。温度が高くなると, 高エネルギー成分(アンチストークス)が増える。従って, アンチストークス/ストークスの比から温度が出せる。

「近赤外〜紫外領域の光を用いて測定されるので,赤外光を使う場合と比べて使用できる材料の範囲が広い」
https://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20100088/bunko/2012/bunko2012.pdf

赤外分光では出ない遷移スペクトルが, ラマン分光では出せる(ことがある)。

別の遷移に対応する光を当てれば, 共鳴ラマン散乱が起きる。
https://www.rs.kagu.tus.ac.jp/yajilab/siryou_IRandRaman.pdf

選択則: Δv=±1 ... Δvは振動の量子数の変化(vはvibration)。2原子分子はすべてラマン活性
http://www.akrmys.com/PhCh2007/note/note02.pdf

レーリー散乱, ラマン散乱は2光子過程。弱い量子効率。蛍光は1光子過程。強い量子効率。

!古典論的な描像

ラマン散乱に寄与するのは, 分極Pの時間変動ではなく, 分極率αの時間変動。Pが時間変動すればそれ自体から光が出るが, αの時間変動自体からは光は出ない。P=αEだから, Eが乗って初めてPの時間変動になる。

分子の骨格(原子核の相対的配置)が振動することで, 分子(の電子雲)が変形する。その変形が分極のしやすさ(分極率)の時間変動を生じる。その時間変動ωが入射光の周波数ω0を変調させ, ω0+ω(ストークス光)とω0-ω(アンチストークス光)の散乱光を生じる。ただしこの描像だと, ストークス光とアンチストークス光は同じ強度のはずだが, 実際は前者の方が後者より強い。

!量子論的な描像

「非共鳴のラマン散乱では入射光の周波数は電子励起の周波数からかなり離れており,電子を定常状態に励起しないが,非常に短い時間であれば,光は電子を仮想的な準位に励起することができる。入射光ωiの吸収により電子状態は仮想的準位に励起され,その後すぐに電子的基底状態へ脱励起されるが,その際,振動状態は最初のエネルギー状態よりもひとつ上の準位へ遷移し(フォノンが1つ励起される),振動エネルギー\hbar ωμ を失った光子が放出される過程がStokes 散乱に対応する。同様に,ひとつ下の振動状態へ遷移し(フォノンが消滅する),振動エネルギー\hbar ωμを得た光子が放出される過程が反Stokes 散乱に対応している。」「光の散乱」テキスト 物理工学専攻 H20 後期 光計測工学 福井大学

http://fir.u-fukui.ac.jp/thzlab/files/Lectures/Tani/optical_scattering.pdf

つまり, レーリー散乱・ラマン散乱の連続スペクトルは, 「定常状態のエネルギー準位」ではない, ごく短い時間の, 非定常の(仮想的な)エネルギー準位に対応する遷移であり, 光子吸収と放出が同時に起きる。その出発状態と終了状態が同じならレーリー散乱であり, 違うならラマン散乱である。

ストークス光はv=0からv=1への遷移。アンチストークス光はv=1からv=0への遷移。熱力学的に(ボルツマン分布), v=0の分子のほうがv=1の分子より多いので, 前者の方が強い光になる。ただし, この比は温度に依存する: 温度が高くなると, 高エネルギー成分(アンチストークス)が増える。従って, アンチストークス/ストークスの比から温度が出せる。