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地図投影: projection

筑波大学農林工学系 奈佐原顕郎

地図投影 (map projection)

 地理情報データを扱うとき、ほとんどの場合は、データを平面的に解析して表示する。しかし実際の地球は球形(つぶれた洋ナシ型)なので、それを平面的に表すための変換操作が必要である。それを地図投影という。

 地図投影法には、さまざまなものがあるが、リモセンやGISで特によく使われる代表的なものは、以下の通りである:

  • 緯度経度座標 (正距円筒図法; Geographic 又は latlon 又は plate caree)
  • ユニバーサル横メルカトル図法 (UTM; Universal Transverse Mercator)

この2つを知っておけば、リモセンやGISデータの80%は処理できるだろう。

緯度経度座標 latlon

 最も単純な投影法である。正距円筒図法ともいう。南緯90度から北緯90度を縦軸、西経180度から東経180度を横軸とする平面直交座標の上に地図を表現する手法である。欠点としては、北極や南極に近い高緯度地帯では横方向が拡大されてしまうことが挙げられる。緯度経度がそのまま座標値になるので、地点の特定や変換が容易である。

ユニバーサル横メルカトル UTM

 みかんの皮をむくように、地球を北極から南極にかけてたくさんの切れ目を入れて短冊状に分割する投影法。経度6度ごとに分割し、地球全体を60枚の短冊で覆う。60枚の短冊のひとつひとつをzoneという。zoneは、西経180度(日付変更線)の東側のzoneを1とし、東周りに順番に番号がつけられている。たとえば日本のつくば周辺は東経140度で、西経180度から積算すれば320度となるが、これを6で割ると、53(余り2)となる。よって、つくばまでに53個のzoneがあるので、つくばのzoneは54ということになる。

演習: 中国の北京を含むzoneの番号を求めよ。
演習: ネパールのカトマンズを含むのzoneの番号を求めよ。

 UTMは、地球を細かく分割してしまうので、ひとつひとつのzoneは実際の地理的な形状をかなり正確に表現する。しかし、その代償として、広い範囲を一気に表示することができない。従って、UTMは、小さい領域の局地的な地理情報の扱いに使われることが多い。zoneの境界付近の解析をする必要があるときは、境界の左右のどちらか片方のzoneを拡大して対象領域を含めるようにする。

 UTMのひとつひとつのzoneには、緯度経度とは別の座標が定められている。この座標はメートル単位であり、短冊状の領域を平面直交座標系に置き、短冊の中心(赤道上で短冊の6度の幅のまんなか)の座標を(500000, 0)として北半球の領域を表す。南半球の領域は、この点を(500000, 10000000)とするような座標系であらわす。つまり、UTMでは、北半球と南半球のそれぞれで座標の表しかたが異なる。

 一方、日本の公的な地図や地理情報の多くは、UTMによく似た「平面直角座標系」という投影法を採用している。平面直角座標系は、投影の原理(ガウス・クリューゲル図法)はUTMと同様だが、日本周辺だけを便利に表現するために、独自の座標系の置きかたを採用している。

参考になるサイト:

測地系(datum)と地図投影(projection)の関係

 初心者には、測地系と地図投影がごっちゃになってしまい、理解しづらいかもしれない。また、多くのGISソフトで、測地系と地図投影の設定は明確に区分けされておらず、ユーザーはなんとなく自動的に適当にやってしまうことが多い。しかし、GISの原理的な理解を深める上で、測地系と地図投影をきちんと理解することは非常に重要である。原理的な勉強は退屈で、得てして日常の研究活動に直結しないことも多いが、原理的な理解をおろそかにすると、思わぬところで大失敗をしたり、無用の手間を費すことがある。

 さて、我々が地理情報をいじるときには、「位置」に関して、以下の3段階の捉えかたがある:

  1. 「現場」... 解析者自身がその場所に行ってそこに立てば、その「位置」は「オレが立っているところ」として決定される。誰も、自分の足元の地表の存在を疑う人はいないだろう。
  2. 「緯度経度」 ... 「オレの場所」という主張では、いくつかの位置の相対関係などを客観的に記述できない。そのために、「緯度経度」という立体的な座標系で位置を統一的に表現する。
  3. 「地図座標」 ... 緯度経度のままだと球面の座標系なので、平面の図にできない。そこで、緯度経度を適当な数学関数で平面2次元の座標にする。

この3つのうち、1と2を結ぶのが「測地系」であり、2と3を結ぶのが「地図投影」である。つまり、測地系と地図投影がセットになってはじめて、「現場」は「地図」になるのである。ということは、「測地系」と「地図投影」は独立な概念である。たとえば、「現場」を「地図」にするために、

例1) 測地系:日本測地系 地図投影:UTM54

例2) 測地系:世界測地系 地図投影:UTM54

例3) 測地系:日本測地系 地図投影:緯度経度座標

例4) 測地系:世界測地系 地図投影:緯度経度座標

など、無数の組合せがあり得るし、それぞれ、違った結果(地図)になる。

投影法の変換

 測地系の変換と同様に、単独地点の投影法変換は、PROJ.4のcs2csコマンドで実行できる。というか、cs2csは、ある測地系+地図投影の組合せを、別の測地系+地図投影の組合せに変換するソフトである。上述のように、測地系+地図投影の組合せは無数に存在するが、実際に実用されるのは、そのうち代表的な組合せだけである。そのような組合せに通し番号をつけたのが、前述のEPSGコードである。

 以下は、単独地点の投影法変換例である:

緯度経度からUTM(zone54)に変換(どちらも世界測地系)

$ echo "137.0 36.0 0.0" | cs2cs -v +init=epsg:4612 +to +init=epsg:32654
(zone53ならepsg:32653とか)

UTM座標(zone54)から緯度経度に変換(どちらも世界測地系)

$ echo "139398.30 3991354.13 0.00" | cs2cs -v +init=epsg:32654 +to +init=epsg:4612

演習: 日本測地系における東経135度0分、北緯35度0分の地点の位置を、世界測地系のUTM(zone53)であらわすとどうなるか?

演習: 世界測地系(JGD2000)における平面直角座標系のEPSGコードを調べよ(ヒント:$ less /usr/share/proj/epsg)。

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Last modified:2015/05/26 06:49:39
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References:[GIS入門]