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リモートセンシングの工学

筑波大学農林工学系 西田顕郎

光と電磁波と電波

光と電磁波と電波はすべて同じもの。電磁場(電場と磁場)を伝わる波。「電磁波」が正式名称。

波長によって性質がいろいろ。波長によって呼び名もいろいろ。

波長による電磁波の呼び方 ()内はおおよその波長範囲。

[短波長]
 ガンマ線
 X線
 紫外線
 可視光線 (0.4μm〜0.7μm程度)
     紫色
     藍色
     青色
     緑色
     黄色
     橙色
     赤色
 赤外線 (0.7μm程度〜10μm程度)
     近赤外線
     中間赤外線
     熱赤外線
     遠赤外線
 マイクロ波 (1mm程度〜1m程度)
 テレビの電波
 ラジオの電波
[長波長]

速度を波長で割ることで、波の振動数(周波数)が求まる。電磁波の速度は3×10^8m/sec。

問題1: 波長10μmの熱赤外線の周波数は
問題2: JERS1/SARのマイクロ波の周波数は1.3GHz. その波長は?
問題3: FMナックファイブの電波の周波数は79.5MHz。その波長は?

プラットフォームとセンサー

プラットフォーム: 空を飛ぶための機械.人工衛星・飛行機・ヘリコプター・気球・凧・鳥など

センサー: 観測をするための装置.カメラ・デジカメ・レーダー・レーザー測距装置・放射計など

ひとつのプラットフォームに複数のセンサーが搭載されることもある.

例: Terra衛星に積まれているセンサーは ... MODIS, ASTER, MISR, CERES, MOPITT

同じセンサー(同型のセンサー)が複数のプラットフォームに搭載されることもある.

例: MODISは,Terra衛星とAqua衛星に積まれている.

プラットフォームとセンサーは,スラッシュ(/)で区切って並記することが多い.

例: Landsat/ETM+ ... プラットフォームはLandsat衛星.センサーはETM+. 
例: Terra/MODIS ... プラットフォームはTerra衛星. センサーはMODIS. 
例: Terra/ASTER ... プラットフォームはTerra衛星. センサーはASTER.
例: Aqua/MODIS ... プラットフォームはAqua衛星. センサーはMODIS.

リモセンの大きなカテゴリー

光学センサーかマイクロ波センサーか?

光学センサー: 人の目で見える光に近い波長の電磁波(0.1ミクロン〜10ミクロン程度)をつかうセンサー
マイクロ波: マイクロ波という,波長の長い電磁波(1mm〜10cm程度)を使うセンサー

パッシブセンサーかアクティブセンサーか?

パッシブセンサー: 対象からやってくる太陽反射や熱放射を観測.
... センサー自身が信号を出したりしないので,「受動的パッシブ)」なセンサー.
アクティブセンサー: センサー自身が信号を出し,対象に当てて,その反射を観測.
... センサーが積極的に対象に働きかけるので,「能動的(アクティブ)」なセンサー.

民生衛星か軍事衛星か?

軍事衛星のデータは、トップシークレットなので民間には流れてこない。
例外: 米海軍のDMSP
例: Landsat/ETM+ ... 光学センサー, パッシブセンサー, 民生衛星
例: JERS1/SAR ..... マイクロ波センサー, アクティブセンサー, 民生衛星
例: DMSP/SSMI ...... マイクロ波センサー, パッシブセンサー, 軍事衛星
例: TRMM/TMI ...... マイクロ波センサー, パッシブセンサー, 民生衛星

リモセンでよく使われるのは、光学センサー, パッシブセンサー, 民生衛星。

問題4: 以下のセンサーを、上のようなカテゴリーで分類せよ:

Terra/ASTER, ICESAT/GLAS, Aqua/AMSR-E, TRMM/PR

パッシブ光学センサー

可視・近赤外・中間赤外・熱赤外のセンサー。

長所: 分解能が高い。人の目視と同様の画像が得られる。
短所: 雲があると、地表はみえない。

空間分解能は,

数km - 数m - 数10cm (可視・近赤外の場合)
数km - 数10m (熱赤外の場合)

太陽光の、地表面での反射光(可視・近赤外の場合)を見たり、地表の熱放射(中間赤外・熱赤外の場合)を見る。

代表的なパッシブ光学センサー:

静止気象衛星(GMS)ひまわり, NOAA/AVHRR, MODIS, Landsat/TM, Ikonos

パッシブマイクロ波センサー

マイクロ波放射計ともいう。地表の熱放射のうち、波長がとても長いものを見る。

長所: 雲を透過して地上を観測できる。土壌水分や雨などの情報。
短所: 分解能がとても荒い(数10km)。

代表的なパッシブマイクロ波センサー: AMSR, TRMM/TMI, DMSP/SSMI

アクティブマイクロ波センサー

主に、マイクロ波散乱計と、合成開口レーダーの2種類。

マイクロ波散乱計

長所: 雲を透過して地上を観測できる。土壌水分や雨などの情報。海上風の情報。 
短所: 分解能が荒い(数km〜数10km)。
代表的なマイクロ波散乱計:

TRMM/PR, SeaWinds

合成開口レーダー(SAR; Synthetic Aperture Radar)

長所: 雲を透過して地上を観測できる。分解能が高い(数10m - 数10cm) 地形測量が可能。微小な地形変位を観測可能。
短所: 地形の影響をうけやすい。判読に熟練を要する。

代表的な合成開口レーダー: JERS1/SAR, ERS/SAR, RADARSAT, SIR-C

3つの分解能

空間分解能 時間分解能 波長分解能

これらは同時に満たすことはできない(トレード・オフ)。

空間分解能: 軌道高度やアンテナ(開口)の大きさで決まる。空間分解能 = 波長×軌道高度/開口の大きさ
問題5: 波長0.5マイクロメートルの可視光で、高度300kmから地表を見るとき、分解能1mを実現するのに必要な開口の大きさは?
問題6: 波長10マイクロメートルの熱赤外光で上と同様の条件を満たすのに、必要な開口の大きさは?

注: SARは例外。軌道上の運航とドップラー効果を利用して、仮想的に大きな開口(合成開口)を実現するのがSAR。

問題7: JERS1/SAR(軌道高度570km)の分解能(18m)を、同じ波長で、SARでなくて実現するのに必要なアンテナの大きさは?
時間分解能: 軌道高度(周回の周期)や観測視野角で決まる。
波長分解能: センサーの感度などで決まる。

波長を細かくわけると、1バンドあたりの光エネルギーが少くなる。→ 相対的にノイズが増え。

センサーの感度を良くするか、空間分解能を下げて光量をふやすか・・・→トレード・オフ

バンドとチャンネル

 衛星センサー、特に光学センサーは、いくつかの波長に対して観測する。 たとえばLandsat/ETM+は、可視光から熱赤外線にかけて、8つの波長で観測をする。 そのそれぞれの波長での観測データや観測センサーのことを、「バンド」とか「チャンネル」と呼ぶ。

Landsat/ETM+では、バンド1が青、バンド2が緑、バンド3が赤のそれぞれの色に対応する波長を見ている。「波長」という表現は実はあまり正しくない。あるバンドが見ているのは、ある波長からある波長までの間の全ての波長の電磁波である。そこで、あくまで波長の区間(波長帯)を見ているということを強調するために、「バンド」すなわち「帯」という言葉を使うのである。

問題8 MODIS (Terra/MODIS, Aqua/MODIS)はいくつのバンドを持っているか?その中で、可視光の青に該当するバンドは何番目か? (ヒント)

衛星の寿命

設計時点では、だいたい5年間。

軌道制御のための燃料が尽きればおしまい。機器の劣化なども寿命の要因。

打ち上げがうまくいけば、設計寿命を超えて稼働することも多い: TRMM

ロケットトラブルなどで打ち上げ失敗すれば、寿命はゼロ(即死)。

うまく上がっても、予期せぬトラブルで停止することもある: ADEOS ADEOS2

問題9 日本のJERS-1衛星(「ふよう」)は、いつ打ちあがって、いつ運用終了したか?運用終了したJERS-1はどうなったか?(ヒント)
Last modified:2011/11/17 15:45:16
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References:[GIS入門]