第7章のコメント
学生のリアクションペーパーから
線形独立は集合の状態なのか要素の関係なのか。「{x1,x2,・・・,xn}は線形独立」という表現は集合の状態のように思うのですが、基底に関する重要定理2に「線形独立なベクトル」という表現もあり、要素同士の関係を表すようにも思えます。どちらの意味も持つのでしょうか?「状態」はそれ単体で完結し(ex.線形空間は集合の状態)、「関係」はそれ単体では完結しない(ex.線形写像は集合と集合の関係)という意味で使っています。
… 鋭い指摘ですね。ここは教科書によって違います。私は集合の状態として扱う方針ですが(「線形独立なベクトル」はその方針とは矛盾する, 良くない書き方ですね), ベクトル同士の関係として扱う教科書もあります。
例7.4で、線形独立かどうかの吟味で、部分集合の線形結合が恒等的に0になるときを考えていますが、xに具体的な値を代入しているのに恒等式が導けるのがよくわからないなと感じました。
… 恒等式は導いたのではなく, 線型独立になる条件です。その恒等式が成り立つ条件を探っているのです。恒等式は任意のxについて等式になる必要があります。そこで具体的なxの値を代入したものも等式になるべきであり, そこからp1=p2=p3=0を導いたのです。必要条件だけを使った解ですが, p1=p2=p3=0を代入したら0=0となって恒等式が成り立つでしょ? (これを自明な解と言います)だから万事OKなのです。
線型独立の定義で、はじめに{x1,x2,…xn}を定義するとき、「ベクトルの集合」などではなく「線型空間の部分集合」なのはなぜ?
… それでもいいけど, 「ベクトル」の定義が必要になります。必要な定義を最小限に留めているのです。