Observation System in Phenological Eyes Network
観測システムの詳細







1 自動撮像型魚眼デジタルカメラ (Automatic-capturing Digital Fisheye Camera: ADFC)

 野外での無人自動撮像を目的とした魚眼レンズ装着(脱着可)デジタルカメラ.AC電源・操作パソコン・データ転送回線の有無に関わらず利用可能(オプション構成変更),かつ,安価なシステムなため,多くの観測サイトに配置することが可能.

 デジタルカメラにはNikon Coolpix 4300および4500 (4300は既に製造中止) を用い、専用魚眼レンズを装着、ドームの付いた小型の防水ケースに入れ、電源線、リモート操作・データ転送のための信号線、および、電源スイッチ線 (電源スイッチ線は4500のみ。カメラの一部を改造) を1本のLANケーブルにまとめケース外部に出し、操作系をカメラより数10m離すことを可能にしている (早坂理工にて製品化) 。AC電源を利用できる場合は、パソコン (もしくは小型ボード。OSはWindowsまたはUnix) を利用し、設定したスケジュールに従い自動撮像・データ転送 (カメラからパソコンへ) を行う。電源施設がない (もしくは電源が届かない) 場合には、長期利用 (数週間〜数ヶ月) に耐えうるバッテリーを使用、Coolpix専用のリモートコードにて繰り返し撮像を行っている。

 ADFCの撮像対象は、天空・観測タワーからの外観・林床からの樹冠 (林床上向き) および林床 (林床下向き) であり、1サイトにつき数台から10数台の設置を行っている。この撮像により、Phenology、天空状況、LAI (Leaf Area Index) の取得のほか、被雲率、PAR、直達・散乱比、BRDF (Bidirectional Reflectance Distribution Function) やBTDF (Bidirectional Transmittance Distribution Function) といった、より高度な処理パラメータ取得も、現在、研究開発中である。また、このために必要な改良 (分光・減光フィルターの挟み込み等) や補正 (放射輝度線形性・周辺減光・ドーム特性等) も進めている。

Ver. 1.00β2002/9 自作.プロトタイプ(旧名:球面カメラ).Nikon Coolpix990のデジカメにNikon FC-E8の魚眼レンズ装着.透明半球ドームを装着した防水ケースに入れ利用.自動撮像はNikon リモートコードMC-EU1を使用.通常電池だけでは(撮影条件にもよるが)数日〜1週間ほどしか持たない.このため,電池ボックスからケーブルを引き出して(本体の外部用端子を利用すると電源自動断が30分設定に固定されるため),より容量の大きい電源(ニッケル水素電池16本)を供給.おおよそ1ヶ月の連続撮像が可能となる.ただし,リモートコードのボタン電池の連続使用限度が3週間程度なので,15〜20日間に1回バッテリー類の交換が必要.(2002/4まで試験稼動.Ver.3βに改良中)
Ver. 1.002003/3 早坂理工(株)製作(概念設計 by PEN).最初の多機能版.Nikon Coolpix4500のデジカメにNikon FC-E8の魚眼レンズ装着.透明半球ドームを装着した防水ケースに入れて利用.電源はACおよびDCに,自動撮像はパソコンおよびリモートコードに対応.DCでの運用時には,カメラ本体ケースに,リモートコードおよびバッテリー(ENAX社製 PowerBattery For Digital Cameraを使用.4本まで)内蔵のリモートケースをケーブルにて接続.パソコン接続はシリアルおよびUSB両対応で,その切替スイッチを本体ケース側面に配置.また,4500の電源スイッチはトグル式のため,緊急時用の電源スイッチをカメラ基板より取り出し,このスイッチも本体ケース側面に配置(これら側面スイッチは製作後に改良追加).
Ver. 1.00
ローコスト版
2003/5 早坂理工(株)製作.Nikon Coolpix4500のデジカメにNikon FC-E8の魚眼レンズ装着.透明半球ドームを装着した防水ケースに入れて利用.外見はVer.1とほぼ同じだが,本体ケースのみで稼動.電源はENAX社製バッテリー(2本まで),自動撮像はリモートコード(電源は外付け電池に変更).バッテリー・リモートコードは本体ケース内に配置.
Ver. 2.002003/7 早坂理工(株)製作(概念設計 by PEN).基本的にはVer.1と同じ.スイッチ類をケーブルによって,リモートコードもしくはパソコン側の近くで操作できるように変更.また,スイッチでUSB接続設定選択時にはAVポートからビデオ信号が取出せる仕組在り.
Ver. 3.00β2003/9 自作.Ver.1.00βおよびローコスト版の箱をベースに作製.システム簡素化・安定化を念頭に安価化(デジカメ込みで一式7万円程度.ただし,工賃除く)を実現.操作・データ転送はシリアルのみで行う(逆にUSBのみにもできる).電源・スイッチ・信号ケーブルの一本化.
Ver. 3.002003/12 早坂理工(株)製作(概念設計 by PEN).β版の小型化,結露対策および取付金具のコストダウン化.


2 半球分光放射計 (HemiSpherical Spectro-Radiometer: HSSR)

 分光日射計には英弘精機の可視分光放射計MS-700を利用 (プリードの全天分光日射計PGP-100も一部観測地点で利用) し、これを、新たに開発した放射計自動回転装置 (早坂理工にて製品化、クリマテックにて販売。CHS-AR01) に装着、上方と下方からの分光放射を1台の分光放射計で測るようにしている。PEN開始当初は、2台の分光放射計を上下それぞれの方向観測用に設置したが、長期連続観測における2台間の機器校正 (放射輝度特性・チャンネル波長特性の相互校正) や精度維持の難しさの回避、および、コスト減少のために、この回転装置の開発・導入を図った。回転装置には台座の両面に機器設置が可能なため、1台の回転装置で2台の観測機器を設置できる (たとえば、HSSRとADFC) 。

 なお、回転する際に生じる上下方向の測定時間差が問題になる場合 (たとえば積雲散在時の光合成活性と分光反射率に関する観測) には、回転装置につけた分光日射計と、常時上向き (天空からの放射観測) に固定した分光放射計の2台観測を実施した。回転装置に設置した分光放射計には下向き観測をさせ、一定時間ごと (たとえば1時間おき) に上向きにし、高頻度で相互校正をかけ、高精度な2台同時の観測を可能にしている。取得されるパラメータは、太陽からの直達・散乱の分光放射であり、樹冠上および林床における分光反射率である。また、樹冠の分光透過率等の算出も可能である。なお、現在、シャドウバンドおよびシャドウボールの導入も検討している。


3 サンフォトメータ(SP)

 サンフォトメータについては、他の機器に比較し、やや高価になるが、プリードのスカイラジオメータを利用している。これは、スカイラジオメータが大気補正計算結果を大きく左右する複素屈折率の情報を得ることが可能なため、そのサイトの季節的な特性を知るために導入している。ただし、この複素屈折率の観測には大気全天からの方向性を持った散乱光の観測が必要なため、全天が均質に晴れている必要があり、そのような条件下での観測は、国内においては、高頻度に行えない。よって、定常的には太陽直達光による大気光学的厚さ観測も行っている。このため、レイリー散乱補正のための気圧の計測も合わせ行い、さらに、スカイラジオメータの絶対校正も定期的に行っている。

 なお、エアロゾル観測のみならず、光合成活性の研究ための太陽光の直達・散乱比の計測や、タワートップに設置したもの (苫小牧サイト) については地上からの放射輝度の観測も実施、そのBRDFやHot Spotのための研究等も開始している。


エクストラ機器