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WGS84とUTM

GeoTIFF画像を作成する際に、ヘッダーに記載されている情報の解釈にだいぶ悩んだので、WGS84とUTMがどのような概念なのかをメモしておきます。詳しい説明は測地系: datumも読んでみてください。個人の解釈に基づいて書いたものなので、間違っている場所があった場合には修正をお願いします(嶌田)。いろいろ修正し付記しました(奈佐原)

WGS84

地球は完全な球ではなく、遠心力で赤道付近が膨らんだ楕円に近い形状をしています。この形を表すために世界中でモデル(準拠楕円体)が提案されてきました。WGS84はアメリカがGPSの運用に用いている準拠楕円体で、GPSが世界中で使われるのに伴い実質的な世界標準となっています。この準拠楕円体に基づいて構築された測地座標系(緯度経度)もまたWGS84と呼ばれています。

UTM

球面である地球の表面を平面で表現するための色々な投影法が存在します(有名なのはメルカトル図法)。しかし、3次元を2次元に投影する以上、100%の情報を表現することはできません。このデメリットを出来る限り小さくし、世界を平面で表現するために開発されたのがUTM図法です。世界をりんごの皮を剥くように経度方向へ6°幅の帯に分割し、それぞれに「Zoneホニャララ」といった名称をつけて区別します(例えばつくば市はUTM54Nに属します)。それぞれの帯の中央を原点として、そこから東・北方向を正とした座標で位置を表現します。ただし、原点の値は数学の原点と違って値を持つので要注意です(北半球では原点のX座標は0 mですが、Y座標は+500,000,000 mです)。また座標の単位はmです。つまり、UTM座標では「地点がどのZoneに属すのか」「そのZoneでの地点の座標は何か」という2種類の情報が必要になります。

WGS84とUTMの関係

WGS84は, 地球の形のモデルと, それを収める3次元空間の座標系を定義するものです。これによって, 地表の点の緯度と経度が定義されます。

UTMは, 緯度も経度も定義しません。緯度と経度はあらかじめ定義されているという前提で, それを平面(地図)に投影する数学的ルール(のひとつ)がUTMです。

つまり, UTMとWGS84は全く違うことを目的とする概念です。思いっきりざっくり言えば, WGS84は作物を作る農家, UTMは作物を料理にするシェフ, みたいなかんじです。

ただし, 緯度と経度をそのまま平面の2つの座標軸(の目盛り)にとってしまえば、UTMとかを使わずに, 位置をそのまま平面に投影できます(農家でとれたトマトをそのままかぶりつくようなものです)。

GeoTIFFを作成するとき

上記のように、ある画像の位置情報を測地座標系WGS84に基づいた緯度経度で与えるのか、それとも緯度経度を変換してUTMに基づいた平面上の座標で与えるのかは大きな問題です。これを解決するためにあるのが、EPSGコードです。GeoTIFFのヘッダー情報を開くと(GDALとpythonでGeoTIFF画像を作成の「#各種情報の取得」などを参考にしてみてください)測地座標系WGS84に基づいた緯度経度の場合にはEPSGコードが"4326"となっていると思います。UTMの場合には、"32651"などといった値になっていると思います(参考:EPSG)。python等で新たにGeoTIFFファイルを作成する場合には、これらの情報をしっかりと目的の地域に対応させる様にしましょう。

付記: 「座標系」には2つの意味があることに注意

この手の話でややこしいのは「座標系」という言葉です。それには2つの意味がある, ということを初心者はなかなか気づきません(そして教えてくれる人もほとんどいません)。それは,

  • 3次元の物体としての地球を収める座標系(x, y, zという3つのまっすぐな軸を持ち, それらは互いに直交。普通は地球中心を原点とし, 地軸に沿って北極方向にz軸をとる)。
  • 地球の表面(曲面)を平面に投影したときの, 平面上の座標系(2つの軸を持つが, 必ずしも直交とは限らないし, まっすぐとも限らないし, 原点はどこにあるかは定義によって様々だが地球の中心にあることはまずない)

というものです。WGS84は前者, UTMは後者を定めるものと考えてよいでしょう。

Last modified:2021/10/07 23:55:56
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