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SARの基礎

2017/05/14 Jin Katagi (書きかけです)

SARの基礎

SARとは

位相

偏光

偏光

レンジ圧縮・アジマス圧縮

レンジ圧縮

アジマス圧縮

スペックルノイズ

SARの観測とそこから産まれるデータについて

SARのデータは, アンテナが発したパルス(短い時間に集中的に出される電磁波)が対象(地表面のあちこち)にあたって跳ね返ってアンテナまで戻って来た電磁波を(多少の処理を経て)記録したものである(厳密には, アンテナがそもそも発していない電波, すなわち地表付近の携帯電話とか通信施設とかから出てくる電波も, アンテナに入ってくるやつは区別されずに記録される)。

SARのアンテナから1発のパルスが発射されると, SARに近い物体からの反射は早く帰ってくるし, 遠くの物体からの反射は遅く帰ってくる。近い物体から遠くの物体まで, 地表には様々な物体が連続的に存在するので, それらからの反射は, 多くの場合, 互いにつながって重なりあったものになる。その「互いにつながって重なりあった」信号を記録するのである。

その記録が概ね終わると, SARから次のパルスが出て, また同様の記録が行われる。このような記録を並べると, 縦軸がSARからの距離, 横軸がSARから出たパルスの何番目か, みたいな「画像」的なデータが得られる。

ただし, ここでは話を単純化し過ぎてしまった。実は, パルスを出してから地表面からの反射信号を受信するまでの時間は, 衛星SARの場合は結構長いので, それを待っていると次のパルスを出せるまでの時間が長くなってしまう。そこで, 受信信号が来る前に, 次のパルス, また次のパルス, というふうにどんどんパルスを出してしまう。そして, あるパルスからの受信信号は, その後のいくつかのパルスを出した後に受信するのである。ここで注意。パルスの送信と信号の受信は同時にはできない!! というのも, レーダーのアンテナは送信と受信の両方を1つの機械で兼ねており, 片方の機能が働いているときはもう片方の機能は止めざるを得ないのである(仮に同時にできても, 送信パルスが受信機に直接混入してしまって, 使い物にならないだろう)。

画像の取得

さて, SARのアンテナに戻ってきた電波はアンテナの中に電流を引き起こす。この電流の大きさと向き(プラスかマイナスか)を検出するのだ。しかし, この電流をそのまま記録するわけではない。この電流は時間的に激しく変動するので, それをちゃんとデジタル情報で記録しようとするとデータが膨大になってしまう。

ではどうするか? まず, この電流信号(時系列信号である)に, cos ωtと-sin ωtという信号をそれぞれ掛け算する(これでひとつの時系列信号から2とおりの時系列信号ができる)。ωはパルスの搬送波の中心周波数というもので, 要するにもとのパルスを構成する振動の代表的な周波数である。この掛け算のあと, さらに, 低周波成分だけを取り出す「ローパスフィルタ」というものにそれぞれの時系列信号を通す。そうしてできた時系列信号は, それぞれが, ゆっくりとした時間変動をする時系列信号であり, これらを記録するのである(変動がゆっくりになるので, まばらな間隔で記録してもOKになり, データの容量を減らせる)。

  •  注: この処理は, 数学的には「ヒルベルト変換」というものに対応する(詳細はたとえばhttp://www1.accsnet.ne.jp/~aml00731/c/communicate/Seminar_text.pdf)。その目的は, データ量を減らすことだけではない。時系列データである反射信号の「振幅」と「位相」の両方を表現することである。というのも, もともとの反射信号は単なる電流強度(実数)の変動であり, その各時刻での値を見るだけでは「振幅」と「位相」を表現できない。ところが, 実数の時系列信号をフーリエ変換して考えると, 正負の両方の周波数成分が対称に混ざっていることに気づく(このことは数学的に簡単に証明できる)。この「負の周波数」が, その信号の「虚数部」を打ち消して実数部だけの信号にしている, と見るのである。そしてこの虚数部を「復活」させるために, あえて「負の周波数」を消し去ってやろう。そんなことができるのか? できるのだ。まず正負のそれぞれの中心周波数(ωと-ω)を, 負の方向にωだけずらして(それがcos ωtや-sin ωtをかけること, すなわちexp(-jωt)をかけることに相当), 中心周波数を-2ωと0にする。そしてローパスフィルター(いわば移動平均みたいなもの)で-2ω周辺の周波数成分を消し去るのである。ここで, 送信パルスは, 中心周波数がωで, それよりも低周波から次第に高周波になるように, 時間的に周波数が微妙に変動するような波形を使う。これをチャープパルスという。前述の「cosやsinをかけてローパスフィルター」という処理は, このチャープパルスの性質(ωを中心としてその周辺に周波数成分が分布する)をうまく活かした工夫ともいえよう。

さて, cosをかけてできたほう(それをI(t)と呼ぶ)とsinをかけてできたほう(それをQ(t)と呼ぶ)をまとめて, I(t)+jQ(t)という, 複素数の時系列信号とみなす(jは虚数単位)。受信信号は先述したように画像なので, Iは画像, Qも画像である。このIとQの組み合わせ(複素数)の画像を,ふつう, レベル0データと呼ぶ。複素数は, 極形式で表せば, 振幅(絶対値)と位相(偏角)という2つの量を表現できる。この振幅は, パルスの反射の強さを適切に表す量であり, この位相は, パルスの帰還のタイミングを適切に表す量である。この位相はパルスを構成する変動の周期の中の位相であり, もとをたどれば前述の搬送波の中心周波数ωでの変動の中の位相である(ωの変動を取り去るのにもかかわらずωの変動の位相が残るのは不思議なことだが...)。SARのωは普通, 1 GHzから10 GHzのオーダーなので, 時間にすると10^(-9)秒や10^(-10)秒といった変動の中の位相であり, 距離にすると10 cmから1 cm程度の変動の中の位相である。つまり, その程度の変動に敏感な情報である。これが後に「干渉SAR」とか「SARインターフェロメトリー」という技術の基盤になる。

画像再生とSLC

レベル0のデータは, 画像の形はしているが, 実際はノイズのようなパターンしか見えない。というのも, この画像の各ピクセルには, アンテナが該当時刻に受信した信号(を変換したもの)が記録されているのだが, その信号には, 地表面の特定の場所を中心として, その周囲のかなり広い場所からの反射波が重なりあって混ざっているのである。この重なりを分解して, シャープな画像にしたい。それを「画像再生」という。

 画像再生は, 実部(I)と虚部(Q)のそれぞれで別々に行う。詳細は省くが, SARのアンテナの向いた方向(レンジ方向という)の画像再生は, パルスのパターン(チャープという)を信号に「掛けて足す」(信号処理の分野で言われる「畳み込み」もしくは「コンボリューション」)という操作を施す。これによって, レンジ方向のぼやけが無くなる。そのためこの処理をレンジ圧縮という。

 SARの移動方向(アジマス方向という)の画像再生は衛星の移動に伴うドップラー効果を利用して, パルスに発生するドップラー効果を模擬したようなパターンを「掛けて足す」。これによって, アジマス方向のぼやけが無くなる。この処理をアジマス圧縮という。

 レンジ圧縮とアジマス圧縮によって画像再生は完了する。その結果, 地表面の事物がはっきり見える画像が, IとQのそれぞれでできる。これらの画像をSLC (single look complex)という。レベル0と同様に, SLCは各ピクセルで実部(I)と虚部(Q)からなる複素数の値をもつ。

また, SLCの振幅の2乗, すなわち, I^2+Q^2が信号強度である。

Lee filter

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Last modified:2018/08/28 16:37:57
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