Research

現在取り組んでいる研究

大起伏山地における降雨流出機構に関する研究

山地流域における雨水の流出プロセスの把握は,洪水防止,水資源管理,流域保全のために重要です.雨水の流出プロセスには,地形・地質・植生など,場の条件が複合的に関与していることが示され,様々な洪水予測手法が提案されてきています.しかしこれまでの研究の多くは丘陵地や中小起伏山地における観測に基づくものが大半でした.大起伏地形を呈する山地源流域においては,観測の困難さから(アクセスの難しさや観測機器が流されてしまう等)データが乏しく,実態そのものが十分に把握されていません. 一方国内外には日本の中部山岳地域をはじめ多くの大起伏山地が存在します.このような地域の水資源管理や洪水予測などの流域保全を考えるために必要不可欠な研究課題です.そこで本研究室では静岡県の大井川上流域(井川演習林)において,河川流量の詳細なモニタリングに基づく降雨流出機構の解明に取り組んでいます.その結果,近年徐々に実態が解明されつつあります.

総合的な現地調査に基づく深層崩壊発生場の予測に関する研究

深層崩壊は基岩内にすべり面を持つ大規模な崩壊で,表層崩壊 (崖くずれ) に比べて 発生頻度は低いですが,ひとたび発生すると甚大な被害をもたらします.また, 天然ダムの形成を含め,河川に供給された大量の不安定土砂が下流域に長期に渡って 大きな影響を及ぼします.実際,国内においても深層崩壊や天然ダムにより, 2011年の紀伊半島大水害などの地域社会に壊滅的な打撃を及ぼすことがあります. また,世界に目を向けると台湾やインドネシア,スリランカなどでの世界各地で 多くの人命が失われる深刻な被害が発生しています.

そのため,深層崩壊や天然ダムによる土砂災害の防止・軽減の上で,深層崩壊の 高精度な発生予測は極めて重要な課題です.しかし,発生頻度が低いこともあり, 発生メカニズムには不明な点が多く,発生予測手法を構築されているとは言い難いのが 現状です.

そこで,本研究室では,深層崩壊の主要な発生場である中・古生層堆積岩地質の大起伏山地 (静岡県の大井川上流域や台湾の中央山脈) において,地形・地盤構造・水文プロセスなどの 総合的な現地調査に基づき,深層崩壊のメカニズム解明と発生予測手法の開発に取り組んでいます.

土石流および土砂・洪水氾濫の機構解析及び予測・対策手法の提案

近年,気候変動の影響により深刻な土砂災害が頻発しています.中でも,流域内で 斜面崩壊や土石流が同時多発し,下流に大量の土砂が流出・氾濫する「土砂・洪水氾濫」と 呼ばれる現象は,近年だけでも,福岡県,広島県,宮城県,北海道など全国各地で 発生し,深刻な被害を引き起こしています.さらに気候変動の影響により,将来は より深刻な被害が生じるおそれがあると考えられ,全国で対策が始められています.

対策をより効果的・効率的に進めるためには,土砂の動きを把握し,予測することが 重要となります.近年は数値シミュレーション技術を用いた予測技術が開発されつつ あります.

そこで,本研究室では,①福岡県,広島県,宮城県で発生した土石流や 土砂・洪水氾濫の実態の把握,②模型実験による土砂の動きの詳細な把握, ③数値シミュレーション技術の開発・改良を進めています. 特に②では,新たな画像解析技術の適用を模索しています.

国土保全・危機管理のための流域監視技術の構築

国土の状況を常時監視し,モニタリングすることは,防災のみならず,環境保全など 幅広い意味での国土保全のために必要不可欠です.しかしながら,山地域は概して, アクセスが悪い上に,情報伝達インフラが乏しいことにより,監視・観測データが 限られています.一方,近年スマートフォンや車載のドライブレコーダーなど, 数多くのカメラが世の中に遍在し,多くの映像や画像が蓄積されつつあります. そこで,そのような画像や映像から降雨や河川の水や土砂の動きが把握できるようになれば, 国土保全のためのデータの取得が格段に進む可能性があります.

そこで,本研究室では,山梨県の富士川流域を対象とし,画像情報から山地の 降雨状況や土砂流出状況,河川の状況の把握の可能性について検討を始めています.

積雪層内の側方流動が斜面変動に与える影響

積雪層はミルフィーユのように積層しているため,氷の層や雪の粒径の違いによる毛管障壁(キャピラリーバリア)により止水面ができます. そのため,積雪表面で発生した水は雪の中を浸透する過程において斜面下方向へ流動します. また,積雪層内における水移動プロセスは厳冬期から融雪期へかけて空間時間変化していくことで,融雪水の地表面へ至る場所もまた変化します. このように,融雪水が地表面へ集まりやすい場所を明らかにすることで,効果的な浸透抑制対策工事の設計に寄与する研究を行っています.

気象観測,短波・長波放射,顕熱・潜熱,積雪深,積雪重量,融雪水量など 雪堀はみんなでやると楽しいです!
気象観測,短波・長波放射,顕熱・潜熱,積雪深,積雪重量,融雪水量など 雪堀はみんなでやると楽しいです!
トレーサー試験の結果.側方流動しているのがよくわかります.
トレーサー試験の結果.側方流動しているのがよくわかります.

岐阜県高山試験地における森林生態系観測

高山試験地は、乗鞍岳の西側斜面に位置する、日本を代表する森林観測サイトです。 私たちの研究室だけでなく、様々な研究室・大学・研究所が一緒に多種多様な側面から観測を行っています。

詳しくはこちら

関わっているプロジェクトもたくさんあります。

  • 岐阜大学21世紀COEプログラム 「衛星生態学創生拠点」
  • 日中韓フォーサイト事業「東アジア陸上生態系炭素動態−気候変動の相互作用解明を目指した研究教育拠点の構築」

リモートセンシングを用いた植物季節の観測

展葉や紅葉など、植物が見せる四季折々の季節的な変化を、植物季節といいます。 地球上の植物季節を知ることができると、 気候変動に対して植物がどのように反応するかを理解することができたり、 植生分布の移り変わりを知ることができたりします。 地球温暖化のような気候変動が懸念されている近年において、 こうした植物季節の観測が重要になってきています。 そこで、地球全土を周期的に調べることのできる衛星リモートセンシングを使って、植物季節を観測する研究に取り組んでいます。

紅葉日 田植え
衛星データから推定した2006年の紅葉日。単位は1月1日からの日数です。 データ解析だけでなく、フィールドにもよく行きます。田植えしてます。

衛星リモートセンシングによる東アジアの植生変動推定

FAO (Food and Agricuture Organization) は2000年から2005年の間に中国の森林面積が2000万ヘクタール以上増加していると報告しています。 この面積は日本の国土面積の半分という莫大な面積であり、地上調査で確認するのはとても大変です。 そこで、地球全土を高頻度で観測することができる衛星リモートセンシングを用いて、東アジアの植生変動を推定する研究をしています。

植生変動 2003/09 2006/09
衛星リモートセンシングで推定した植生変動(赤:植生が増えたところ,青:植生が減ったところ) 2003年9月10日の黄土高原 2006年9月6日の黄土高原。写真中と同一地点です。植生が増えている様子が確認できます。

衛星で推定した光合成有効放射量の水稲収量予測への有用性

従来の稲の収穫量予測には, アメダスの日射量データが用いられてきました. しかし, アジアなどの途上国ではアメダスの様な地域気象観測システムはありません. 稲の生育に不可欠な要素だといえる光合成有効放射量 (Photosynthetically Active Radiation :PAR) は, 地表を広域に観測できる衛星によって簡易的に推定できるようになりました. 本研究では, 衛星から推定したPARが水稲の収穫量を予測するのに有効かを検証しました.

PAR PARと作況指数 日射量と作況指数
衛星で推定した日本全国のPARマップ (赤 : PARが高い, 青 : PARが低い) 松本盆地周辺が一番高い! 衛星のPARと作況指数の対応関係 アメダスの日射量と作況指数の対応関係

衛星リモートセンシングによる高山帯の融雪時期の推定

融雪時期の変化は, 周囲の環境に影響を与えるといわれています。 特に寒冷環境に成立する高山生態系は, 環境変動の影響を受けやすく, 地球温暖化による生物多様性の減少が懸念されています。 そこで, 飛騨山脈 (北アルプス) を対象として,衛星リモートセンシングを用いた積雪マップの作成と融雪時期の経年変化の推定をする研究を行っています。

北アルプス 融雪日 乗鞍岳
対象地域の北アルプス 衛星から推定した2007年の融雪日 やぐらから見た乗鞍岳

衛星リモートセンシングを用いたスギ花粉飛散総数の予測手法

近年人工衛星により光合成有効放射 (Photosynthetically Active Radiation :PAR) の推定が可能になりつつあります。 スギ花粉飛散総数と前年夏期の気象要因には相関があり、気象要因から経験的に翌年のスギ花粉飛散総数を予測する事ができます。 本研究では人工衛星により推定された前年のPARから、翌年のスギ花粉飛散総数の予測を行っています。

スギ花粉 PAR スギ林
2010年のスギ花粉飛散状況 2009年夏期 (7/1-8/31) の日平均PAR スギ林写真

インドネシア・メラピ火山周辺地域の土地利用の変遷

インドネシア・ジャワ島中部にあるメラピ火山は、世界でも有数の活火山です。 なので、その周辺地域では噴火に対する防災対策を古くから行われています(日本もやってます)。 防災対策を行うには「どこに人がいるか?」という情報が必要不可欠なので、 これまでメラピ火山周辺地域の防災対策は1970年代後半の情報をもとに計画・実施されてきました。 でも、さすがに30数年前の情報では古すぎるんじゃないかということで、 「どこに人がいるか?」に関係する土地利用状況についてここ10年くらいの変遷を調査しています。

メラピ火山周辺 メラピ火山
メラピ火山周辺地域。(2004/06/07 Landsat) メラピ火山。(2010/01/11 撮影)

人工衛星を用いた水田地帯における耕作放棄地の判別

耕作放棄地とは、1年以上作付けしておらず、かつ、今後とも耕作する意志のない農地のことです。 日本の食料自給率を向上させるためには、耕作放棄地を解消していくべきです。 それにはまず、耕作放棄地の分布を把握する必要がありますが、定期的かつ空間的な調査を低コストでできたらステキです。 そこで、本研究では、人工衛星を用いて耕作放棄地の分布を把握しようとしています。

AV2 現地踏破 田植え
AVNIR-2による耕作放棄地の判別結果(■:耕作放棄地) 現地踏査による耕作放棄地の判別結果(■:耕作放棄地) フィールドへ行くのはとても楽しいです。田植えしてます(パート2)。